tabibito9tabitoのブログ

旅人のタビトによるエッセイ

現実と幻のはざま

ある日、女性と知り合った。

彼女は最近こちらに越してきて
独りで美味しい店はないかと
ブラブラしていたらしい。

友人と食事をした店で
隣り合わせになったテーブルから
話し掛けてきた。


別段おかしなところも感じられなかったし、
何より
知らぬ土地に
女性独りというのに
何となく気の毒に思えて
連絡先を交換した。


後日彼女と会うことになった。


たまたま
イベントのチケットが余っていたので
どうかと誘ったのだった。


彼女は結婚していて、
仕事の都合で遅れている旦那より
一足先に引っ越してきて、
彼が来るのを待っているのだそうだ。

イベントの後、
喫茶店に落ち着く頃には
一通り自己紹介も済んでしまって、
そんな話になっていた。

コーヒーとケーキが運ばれてくる頃には、
実は
こちらに引っ越して来たのは
御近所トラブルが有ったのだと言う。

あぁ、
人間生きていれば
そんな目にも遭うことも有るなと
聞いていたら、

盗聴までされていて
家庭内の話が筒抜けだったのだ、
と。


そこまできて、
これは
アヤシイなと思い始めたけれど、

人間生きていれば
病気にだってなるのだから
仕方がない。

何より
まるで
頭のオカシナ人には見えないのに、
どんな
身なりも
受け答えもキチンとした人にも、
病は訪れるのだな、


むしろ気の毒に、

そして
全くオカシナ風に見えないことに
驚いていた。


彼女は
盗聴や尾行に苦しんで、
家の外にもおいそれとは出られない生活を
強いられ、

仕事から帰宅した彼と
入れ替わりのように
本の暫くの外出が出来た。

警察にも解決出来ず、
結局
引っ越すことにして、

仕事の都合のつかない彼より
一足先にこちらで部屋を借りて、

新居の建築が終わるのを待っている、
と言う。


後2カ月で出来上がるから、
どうぞ遊びに来てくれ。
その頃には旦那もこちらだし、
どうぞ気兼ねなく、と。



その夜
家に帰って私は
この事を知り合いに話した。


本当に
盗聴尾行と言い出すまで
何処もオカシクないし、
その話も本当に辛そうだったんだと。


まるで、嘘や作り話には思えなかったんだ、と。



すると帰ってきた返事はこうだった。





もしかするとその人、
旦那さんも実在しないかもよ。