tabibito9tabitoのブログ

旅人のタビトによるエッセイ

真心の伝え方


    寺で大きな柏手が聞こえた。


反射的にそちらを見ると、
年配の夫婦と思われる二人連れだった。


傍に居合わせた人が連れに
  「あら、嫌だわ、神社と間違ってる」
             と言うのが聞こえる。


すると
別の、少し離れた年配のご婦人が連れに言った。

   「神社の方かしら、ね」

  隣に話し掛けるには
          少し大きな声で。

    目が合った私に会釈をする。


『柏手の御夫婦』は
   身なりもキチンとして、
   とても美しい柏手を打ち、
   とても美しいお辞儀をした。
   二人でいかにも慣れた様子で、
   それでも
   とても心のこもった美しい所作で。


私にも
  あの夫婦は単に間違っただけの様には
                思えなかった。


自分たちの信ずる
    正しい方法で
    真心を込めて
       お寺を参っただけのように思えた。


そしてそれでよい。
間違ってなどいないように思えた。


やり慣れない見様見真似の所作よりも、
自分たちなりの思いを込めた
素晴らしいお参りの仕方に思えた。


私も御夫人に会釈を返し、
なんとなく
『同じ思いの通じ合った事』に
       ほっとするような、
        救われたような気持ちになった。