tabibito9tabitoのブログ

旅人のタビトによるエッセイ

平等や自由(とある駅で)

田舎の町に行くと、小さな駅に出会う。
通勤通学には絶対必要だけれど、
観光客や通りがかりの人は大して来ないような駅。
単線だったり、
さほどたくさんの発着がないのかもしれない。

ホームにエレベーターは無い。

改札は一つ側だけで、
あちらとこちらのホームを繋ぐ
高架が架かっている。

暗くなってから駅に着くと、
高齢で車椅子に乗った男性と
それに掴まってなんとか歩いている女性、
その二人の息子らしき人。

その三人が階段に向かっていた。

改札へは
 階段を使い
  線路を渡らなければならない。

ホームの端に直接道路へ出る扉があった。

『利用者はインターホンを押してください』
とある。


それを見つけて三人に

「アレを利用されないのですか?」
と尋ねると、


「アレ、鍵が掛かっているんです。


   夜間は無人になるので、
   呼び出すと
   係員が次の電車に乗って
   鍵を開けにやってくるんです。

   来て貰うのも、
    待つのも大変なので」と。


信じられなかった。


二人は
  不自由な身体をおして
     両手で手すりにしがみついて
数段上がると
     息をつき、

男性は
  畳んだ車椅子と
     大きなリュックを担いで
              上がって行く。

私には、
 その車椅子も
 大きなリュックも
      代わりに持つような強さも無かった。

ただ、
  三人の少し後ろで
          付いて歩くことしか。



三人が
すぐに気付いて

「どうぞ行ってください。
慣れてますので」
と言ってくれる。

きっと
最後まで付いて歩かれたのでは
三人は
しなくてよかった気疲れをするだけだろう。

実際、
彼等だけのルールに従って進んで行くように
                  見えた。



きっと
彼等には
    それが日常なのだろう。



ただ
  「お先です。
      お休みなさい」
          と言うのがやっとだった。



何百人が
 鍵の無いドアを開けて
 無賃乗車をしたとしても、



あの三人が
     自由に電車を使えるのなら、




『アノ』ドアは




  鍵を掛けなければいけなかったのだろうか。




咽の奥に何だか解らぬ痛みの塊を
            ぐっと飲み込んで、


     駅を出るより無かった。