tabibito9tabitoのブログ

旅人のタビトによるエッセイ

北野武とボブディラン


『その男、凶暴につき』



は単に

「ビートたけしが監督になった」

の物珍しさで観た。



面白かった。



とても

「洗練された映画とは言えない」

と思ったし、



「下手したら


映画ではないかも」


とも思った。




でも
それが


「映画に届いていない」


だけなのか、

もしかしたら



「映画の向こう、

新しい時代の可能性はないのか」

と、



あの頃生意気で、
知ったかぶって、
自信満々だった自分は思っていた。







『あの夏、いちばん静かな海。』


は正直、

久石譲目当てだった。




それでも
やっぱり



「ほらみたことか!」



と思った。



変身したぞ!





「ナニ聞いてるんだ」
「PPM」
「ダッセー反戦フォークかよ」
「ボブディランが良いんだ、歌詞が良いんだ」
「でも、古臭い反戦フォークだろ」


映画同好会員の友人と話していた。

その後、好きな監督を問われて


「北野武」


と答えたら、


「あんなもんは、映画じゃないよ。
所詮、


売れてる芸人が
金に物言わせて撮った学芸会だよ。


北野武なんて笑わせるぜ、
ビートたけしと呼べよ」



と笑われた。





それでも、


「自分は好き。

今はお遊びでも、きっと世界の北野武になるんだ。


音楽だって好きだし、


急に今作からの


ものすごく
キレイで
切ないくらいの
青い
海の
描写が、


つらくてならないんだ」



って必死に語って、

鼻で笑い飛ばされた。




「大人やツウが馬鹿にしたって、
きっと時代が来るものだってあるんだ。


PPMだって、

古臭い反戦フォークって笑ったけど、

きっと再評価される。


ボブディランが心に染みいって血に成る頃には、

世界が追いつくんだ」



って、



その時必死に弁護した2人が、


金獅子賞を獲った時も、



その後時間は掛かったけど



ノーベル賞を獲った時も、



多分、自分は


世界で一番喜んだ人間の1人

に数えて貰える筈だと信じてる。



それでも


追い掛けていって

「ほら!みたことか!」

と言わなかったのは、



『ソナチネ』で
「たけしの後ろに立ってるだけの
アノ役者さんは誰」

って聞いた自分に、


「あれは、
面白い経歴の役者らしいよ。

ポルノにも出て・
アングラ劇団で・
無言劇をやるらしい」


と教えてくれたのはその友人だったからだ。


あの後、

ちゃんとソナチネまで観て、

俳優まで調べていたんだ……



その時は自分には


ソノ俳優の名前も


覚えられなかったし、




アングラ無言劇ポルノ



と聞いて、





子供の頃テレビで恐れ戦いた、



白塗りのフンドシダンサー




しかイメージできなかったから。